生糸ができるまで
いなぶまゆっこクラブでは、桑の育成から蚕の飼育、繭づくりに至るまで一貫工程を確立しています。
古来より蚕は、「おカイコさん」、「お蚕(こ)さま」、「おしらさま」と呼ばれ、大切に飼われてきました。それは、蚕が生み出す絹が貴重で高価なものだったからです。
日本の近代化を語る際、蚕は欠かせません。明治維新を経て、日本が欧米諸国に仲間入りをしようと懸命だった時代、生糸や絹織物の輸出を通じて外貨の約半分を稼いでいました。
そして、この稲武の地においても蚕はとても大事に育てられてきました。山村の農家に現金収入をもたらす数少ない手段だったことがその背景にあります。
そんな蚕が食べるのは、ご存知の通り桑の葉。
いなぶまゆっこでクラブは、活動拠点「まゆっこセンター」の周囲に桑の木を植え、蚕が常に新鮮な桑の葉を食べられるよう配慮しています。
稲武で蚕の飼育をするのは、一年のうちでも、5~6月と限られた期間。蚕は、孵化して5齢幼虫まで脱皮した後、繭づくりを始めます。
繭の中で蚕が蛹になったところを見図らい、繭に熱を加えて乾燥させます。その後、鍋で繭を煮て、座繰機(ざくりき)を用いて糸を取り出し、巻き取ります。これを繰糸(そうし)といいます。
繭がたった1本の長い糸でできているのはご存知ですか?
糸の長さはおよそ1,400m。でも、太さはたったの0.02mm。にもかかわらず、非常に丈夫で、引っ張る力に対しては鋼鉄並の強さを持っています。更に、強さだけでなく、美しさとしなやさかも兼ね備えています。
蚕の命と引き換えに生み出される生糸…。私達は、これからも宝物として大切に育んでいきます。
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